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2026.03.11

民衆イスラーム論

担当教員: 赤堀 雅幸
カテゴリ: 専門(300シリーズ), 教授言語/日本
レポート日: 2025/11/25

教員からのコメント

 イスラームについて日本の大学で学ぶときには、多くの場合にその宗教を支えてきた知識人たちが支え、洗練してきた高度の教義や思想について授業が行われるのが常でした。その一方で、1970年代に始まるイスラームを政治化する、もしくは政治をイスラーム化しようとする流れ(「イスラーム原理主義」などと呼ばれます)は、グローバルな政治的イシューとしてイスラームについて学という授業もふやしてきました。
 この授業は、そのどちらにも属さない、いささか珍しい種類のイスラームについての講義です。担当者の専門は人類学であり、人類学は世界各地に暮らす人々の、様々に異なる暮らしぶりの研究を通して、ヒトについて考えようとする学問です。担当者も1980年代末から3年余りをエジプトに暮らし、そこでベドウィン(アラブ遊牧民)と暮らすことから、研究者としての道を歩み始めました。
 この授業が目を向けるのは、私たちと同じように日常を生きるムスリム(イスラーム教徒)が、自分たちの宗教をどのように信仰し、実践し、他の信徒たちと関係を取り結んでいるかであり、いわゆる「民衆イスラーム」といわれるものの最新の研究成果を紹介していきます。
 前半は、聖者、預言者一族、聖遺物、精霊などをめぐる前近代から続く伝統的な民衆信仰を扱い、後半では現代に新しい動向をみせる大衆のイスラームとして、イスラミック・ツーリズムやイスラーム・グッズを取り上げます。
 何せ、授業に参加した人たちが初めて聞くような話も多く、なかなか双方向的な授業はむずかしいので、授業それ自体は私が話しまくるという形になってしまいます。その一方、学生は毎回の授業内容に関する小テストでの振り返りや2回のリアクションペーパ、文献表の作成、学術論文のレビュー小レポート、最終的には民衆イスラームに関する1冊の書籍を読んで書評レポートを書く形で、自身の学びを表現してもらいます。レポート類は希望者へは個別にフィードバックを行います。
 この授業を通して、高度の教義の集積体でも、恐ろしげな政治運動でもない、イスラームのあり方を通時代通地域的に考える機会をもち、さらには日常のなかに信仰を有するという宗教の本質的な働きに思いをめぐらせてもらえるとうれしいと思います。同時に、多くの課題はよりよいレポートや卒業論文を書くための研究技法の訓練をも兼ねていますので、そのつもりで取り組んでもらうのがよいでしょう。
  
 ともすると見過ごされがちなムスリム(イスラーム教徒)の日常生活を、学生がより深く知ることを目指し、民衆的なイスラームに関する人類学の研究成果を解説する。主として、聖者、神秘主義、精霊、邪視などを取り上げる。同時に、現代のイスラーム、現代とイスラームをどのように理解するのかという問いに答える視点を論じ、イスラーム原理主義とは異なる現代イスラームの展開のあり方を、宗教消費財や宗教観光の隆盛といった視点からみていく。

学生からの声

1.授業概要
この授業は実際のムスリム達にとってのイスラーム、言い換えれば日常生活とイスラームの関係を学ぶことができる授業です。イスラームといえば断食、礼拝といった教義の面が強調されることが多いですが、ムスリム達が実際にどのようにしてそれを実践しているのかについてはあまり注目されないと思います。本授業はそうした生活に密着したイスラームについて学ぶことができます。

2.この授業を履修しようと思った理由
授業テーマが興味深かったのもありますが、赤堀先生の授業がおもしろくて好きなので履修しました。また私は文化人類学に興味があって、本授業が文化人類学と重なる分野を多くもっていたことも履修を後押ししました。中東アフリカ研究の科目は人類学や政治学、歴史学など様々な学問分野に跨っているのでとても魅力的だと思います。

3.この授業の魅力
最大の魅力は実際のムスリムの姿を知ることで確実にイスラームという宗教に対しての解像度が上がることです。例えば断食はもし1回失敗しても、後で1日追加で断食をすれば構わないとされています。このように実はイスラームはみなさんの想像よりも柔軟に実践されているのです。このように実際の生活と結びついたイスラームの姿を学ぶことができるのは魅力的なポイントであると思います。

4.この授業で学んだことを次にどう繋げたいですか 
今回の授業を通してムスリム達への理解が一段と深まりました。ムスリム移民と現地の日本人との相互理解は、労働力不足の日本が今後必ず直面する課題でしょう。私はこの学びを活かして、日本に住むムスリム移民と現地の日本人との間の架け橋になりたいと考えています。
(奥田悠晴 総合グローバル学部2年生)


1.授業概要
前提知識を要さず、イスラームの基本となる六信五行の理解から始まり、聖者崇敬や聖遺物、精霊などを題材に伝統的な民衆イスラーム論、そしてグローバル化とともに新たな展開を見せる今日の民衆信仰について学びます。並行して基礎ゼミで学んだアカデミックスキルズを研磨します。

2.この授業を履修しようと思った理由
外国語学部でスペイン美術史の授業を受講し、イスラームとキリスト教のせめぎ合いを彷彿とする芸術的土壌に関心を持ちました。カトリック系の中高で親しんだキリスト教に対して、教科書程度の理解に留まっていたイスラームについて、その教義やムスリムの暮らしぶりを学びたいと考え、本授業を履修しました。

3.この授業の魅力
赤堀先生のパッション溢れるご講義では、民衆イスラーム論の骨格から周辺領域までを圧倒的な情報量で学べます。研究案内も充実しているので、自分の関心を研究課題へ昇華させる視点を持って受講できます。文献表作成や文献評価レポート等の課題を通じて、基礎ゼミで学んだアカデミックスキルズを高められる点も魅力です。

4.この授業で学んだことを次にどう繋げたいですか 
今まで神話や聖典など宗教の教義そのものに関心がありましたが、本講義で前近代から現代に至るまで変化し続けるムスリムの暮らしぶりを学ぶなかで、それが人々の生活でどのように実践されてきたのかにも興味が広がりました。民衆イスラームを手がかりに様々な宗教の民間信仰について学びを深めてゆきたいです。
(大塚詩音梨 総合グローバル学部2年生)