本ゼミのテーマは「東南アジアから多様な文化の共生を考える」です。文化や宗教の多様性にあふれる東南アジアの例から、理想的ではなくても異なる人々が共に生きる様々な方法を模索します。
本ゼミでは年度によって異なるテーマで東南アジアの地域の事例を深く学び、多様性とは何か、共生とは何を目指すことなのかを考えていきます。2022年度のテーマは「マレーシアから共生を学ぶ」です。卒業論文については対象とする地域も問題も人それぞれですが、ゼミの活動としては卒業論文とは別に、共通のテーマについて学んでいます。春学期にはマレーシアについて語るためにまず必要となる知識を身に着けるため、マレーシアの歴史の書籍を一冊読みました。また、対象の地域について学ぶにはその地域の言語を学ぶことが不可欠なので、マレーシアの国語であるマレー語(マレーシア語とも呼ぶ)をゼロから学び、マレーシアの大学で日本語を学んでいる学生と『旅の指さし会話帳』を手にZOOMでお話しました。マレー語とほぼ同じ言語であるインドネシア語を履修したことがある学生は、学んだ表現をたくさん使って話せていました!

地域を知るにはまず人から。コロナ禍でも、オンラインでの交流や、マレーシアからの訪問者や留学生などと交流する機会はたくさんあります。英語に加え、少しでも交流相手の地域の言葉ができると、盛り上がり方は格別。人に出会って、心地よい経験や、つらい経験をする中で、自分と身の回りの社会を新たな視点で見つめることができればそれは立派なフィールドワークだと思います。ゼミ生たちは、日本に住む東南アジアの人々を訪ねてフィールドワークをしたり、マレーシアやインドネシアに行ってその空気を感じたり、東南アジアや欧米などに留学をして多様性を肌で感じる経験を積んだり、とそれぞれの形でフィールドワークに出かけています。

マレーシアの中には、マレー人、華人、タミル人(インド系)、東マレーシアの先住諸民族など、「民族」だけをとっても多様な人々がいて、どの集団に焦点をあてるかで「マレーシア」という国は異なる姿を見せてくれます。さらに「マレー人」とは誰なのか、いつ、どのように「一民族」として形成されてきたのかを考えると、「マレー人の価値観とは・・・」と単純に語ってしまうことの危うさにも気づくことができます。今年度は、あえてこの「民族」別にグループを分けてそれぞれの歴史、社会を学び、相互に発表することで「マレーシア」「マレー人」という国家や民族の枠組みで語ることの難しさを実感するという学習もしました。秋学期はテーマ別にグループで分かれて、また異なるマレーシアの姿を発見してもらいたいと考えています。このように、本ゼミでは東南アジアの具体的な地域を例とすることで、「共生」というテーマを「そもそも誰と誰の共生なのか」「民族とは」「国家とは」・・・といった根本的な問いにつなげて考えていきます。

1. 奥野克己・MOSA
2020『マンガ人類学講義 ボルネオの森の民にはなぜ感謝も反省も所有もないのか』日本実業出版社・・・甘口コース。東マレーシア、サラワク州に住むプナンという人々の世界観から日本の私たちの生き方を見直す視点をマンガで学ぶことができる。
2. 井口由布
2018『マレーシアにおける国民的「主体」形成ー地域研究批判序説』彩流社・・・辛口コース。学部2年生でもかなりなじみがない学術用語がたくさん出てくるが、「多民族が共生するマレーシア社会」という素朴な想定を根本から疑い、「多文化共生」の議論を深める見方を示してくれる。