FGSでは様々な分野を学ぶことができ、したがって卒業生の進路も様々です。しかし、その多様な進路のなかでも「学校教員」の道を選ぶ学生はごく僅かなようです。本稿では、FGSで教職を目指す方々を主な対象として、私の経験を共有したいと思います。
はじめに、この学部が教員志望者に適した学部ではないということを伝えなければなりません。FGSで取得できる教員免許は「中学 社会」と「高校 公民」の2つですが、この2つの免許で採用してくれる自治体や学校は多くないでしょう。教員としての就職先の選択肢を広げるためには、他学科聴講などの手段で他教科の免許状(たとえば「高校 地理歴史」)を取得する方法がありますが、履修単位数などの点で大きな負担になります。私の場合は「中学 社会」と「中学 英語」、「高校 英語」の免許を取得しましたが、卒業予定年を1年遅らせることになりました。(ただし、半年間の留学にも行っています。)このような教職課程との「折り合いの悪さ」は、FGSでの学びの価値を考えると非常に残念なことです。
しかし、私に現行の制度を批判する意図はありません。ここでは、FGSで同じように教職を志す方々に、卒業生としての助言をし、エールを送っていきたいと思います。本稿が皆様にとって何らかの参考になれば幸いです。
東京都を志望した理由は、私が東京出身だからという理由に尽きます。それでは話にならないので、代わりに、なぜ中高の教員を志望し、英語科教員を目指したのかについて述べたいと思います。
入学当初から、私は教職を考えていましたが、それは私自身の中学・高校での経験に基づきます。先生方に支えられながら成長できた自分が、今度は自分が生徒を支える側になりたいと思っていました。
FGS を入学先として選んだのは、教員以外の道に進む余地も大いに残されることと、教科の専門性が身につくと考えたことが主な理由です。
「教科の専門性」ということからもお分かりいただけるように、私は元々社会科教員を志望していました。それが英語科志望に変わったのは、英語圏(オーストラリア)への留学がきっかけです。留学中に、「非ネイティブとして英語を学ぶ自分」の姿に疑問を持ち、帰国後から、いわゆる「他学科英語」という形で英語の教員免許取得を始めました。やがて、英語科での言語教育を通して生徒の可能性を広げ、他者と共に生きていける人間を育てたいという思いから、英語科志望を決めました。
私は東京都の「名簿登載者」であると同時に、教職大学院進学予定者でもあります。東京都には、教職大学院進学者は「名簿登載期間」を 2 年間延長できる制度があり、この制度を利用して私は教職大学院に進学します。このような制度の有無および詳細は自治体によって異なるため、最新の情報を確認していただきたいと思います。
大学院に進む理由は、英語科教員になるにもかかわらず、学部での専攻が英語学や英語教育学とは直接関わりのない分野だったからです。中高の教員にも高い専門性が求められるからには、これらの分野を専門として学びたいと思っていました。
そのような思いを抱いている中で、本学と東京学芸大学が連携協定を結び、「スタートパスプログラム」という制度ができました。詳細は課程センターなどで確認していただきたいと思いますが、大まかに言うと、東京学芸大学教職大学院の特別選抜入試を受験することができる制度です。東京学芸大学が教員養成に特化した大学であることや、教員採用試験に合格した場合は名簿登載期間を延長できること、なにより、英語学や英語教育学で関心のある分野を専門とする先生がいることが決め手となり、東京学芸大学を志望し、進学することとなりました。
進路決定の際には、自分自身の経験や価値観、信条が重要な要因となります。自分が何を経て、何を学び、どうして今のようであり、これからどうしたいのかを考えておくとよいでしょう。
はじめにも言及したように、FGSは教員養成のための学部ではありません。しかし、学校教育に通ずる学びは意外にも身近なところにあることを強調したいと思います。
たとえばそれは、グローバル・スタディーズを通して得られる「複数の眼差し」―複数の次元・角度から物事を見つめ、考える力―です。他者のどのような部分に注目するのかを考え、その際の自分の立場がどのようであるかを内省できるようになることは、生徒と日々向き合う教員に必要なことだと思います。
振り返って思うに、学部のカリキュラム・学びの構成はとても良く順序づけられたものでした。入学後の必修科目で、グローバル・スタディーズの概論や、オリエンタリズムについて学んだ(志願者の方は学ぶことになる)かと思いますが、それらを学部 1 年生の最初期に学ぶことの重要性を意識してほしいと思います。(私は4年生になって初めて意識したのですが…。)カリキュラムにも必ず何らかの意図があるものなのです。これも学校教育に通ずる点ですね。
教員志望の方は、一般的には3年次に介護等体験があり、4年次に教育実習があります。これらの体験や実習は、教職課程の一部としてだけではなく、学部での学びにも大いに活きるものです。異なる他者の存在を身近に感じること、人に何かを教え伝えることは、自分自身を見つめ直す機会になります。これらの経験を通して得られる学びや気づきは、学部での研究を進める上できっと有益なものになるでしょう。私の教育実習に関していえば、ゼミで学んでいた内容(オスマン帝国史)が実習を通して体系化され、実習で得た眼差し(社会構成主義)がゼミでの学びを通して洗練されたように思います。
就職活動については、教員志望者のスケジュールは一般就職者とはズレがあります。就職活動真っただ中の時期に、教員志望者は教育実習に行くことになります。一般就職を目指す友人が内定を得ている頃でも、教員志望者は採用試験に向けて勉強していることが多いです。(ただし、いくつかの私立学校は一般就職者とほぼ同じスケジュールで進みます。)ご友人の就職が決まったとしても、焦らないことが肝要です。自分のペースで物事を進めることは時に重要で、卒業論文の執筆についても同じことが言えます。最終目的地を決め、見失わないように進んでいきましょう。
FGS は、その名の通り、「グローバル・スタディーズ」を学ぶ学部です。この学部で学生は「グローバルな視座」を身につけ、「世界」を舞台に活躍できるようになることが期待されています。
FGS での学びを進めるにあたっては、こうした「グローバル」や「世界」という概念を特に意識して考えてほしいと思います。「グローバル」な問題を考える時に「ローカル」への眼差しが持てているか。
私たちが「世界」と言うときにそれは何を・どこを指しているのか。「グローバル」な問題や「世界」を見つめる時の私たち自身の眼差しは誰のものであり、どこに位置しているのか。こうした内省を絶えず行うことが、FGSの学生には決定的に重要です。メジャーあるいはマイナーとして、私たちは地域研究を選択することになります。その際、その地域を見つめる私たち自身の眼差しをも批判の対象に含め、自己を見つめる眼差しを持ち続けてほしいと思います。
教員志望者にとっては、文字通りの「世界」を舞台に活躍することは難しいですが、環境が変わっても活躍できる教員を目指すことはできます。また、学部での学びを生徒に伝えていくこともできます。生徒の心に残るように教え伝えられるようになるために、熱意をもって学んでいきましょう。多忙な学生生活になるかと思いますが、応援しております。がんばってください!