私は、入学以前から公務員を目指していました。といっても、公務員試験に有利だからという理由で、この学部を選んだわけではありません。本稿では、FGS の学びを公務員という職業にどう活かしていこうと考えているか、お話します。
高校時代、NHK スペシャルの女性の貧困特集を見て、TV の前の自分と同じ女子高校生が“生きるために”夜間アルバイトをする姿に衝撃を受けました。それをきっかけに私の関心は、ジェンダー問題や障碍に関する問題など、社会的に弱い立場に立たされやすい人へと向いていきました。そこで、これらのことについて学べそうな社会科学系の学部を片っ端から受験した結果、縁のあった FGS にお世話になることになりました。
このような経緯のため、正直に申し上げますと FGS のカリキュラムや方針は入学後に知ることになるのですが、「ジェンダーをやるなら“社会学”だ」と決めかかっていた私にとって、FGS のそれは自分の想像と少しギャップがあるように思いました。ただ、その疑念は学びを重ねていくうちに薄れていきました。今では、FGS こそ、人々が抱える問題の具体的な解決のために、様々な視点を駆使し、自ら動く力を得ることができる最高の場であると思っています。
FGS での学びは国際政治や経済学、人類学など多岐にわたります。そしてその幅広さゆえに、在学中「自分は大学で何を修得できたのだろう」と自問することが多々ありました。「ほかの学部だったらもっと自分の学びについて自信を持てるのかな」と想像してしまうこともありましたし、公務員試験に関して言えば、法学部や経済学部に比べて試験対策に直結する部分は多くないと言えるでしょう。
しかし、この学びは公務員として働く中でこそ輝くものではないかと考えます。その学びとは、さまざまなバックグラウンドを持つ人の存在を知ったことです。例えば、グローバル化に関する講義を受けて、米国人、中国人、といった言葉から、「○○にルーツのある人」という言葉遣いになりました。国家と言語に関する講義を受けて、「母国語」と言っていたところを「母語」というようになりました。
このような変化は、自らの持つ「当たり前」を疑い、相対化することではじめて生じるものだと考えています。FGS の多様なカリキュラムのおかげで、いくつものバイアスに気づくことができました。「お客様」を選ばない、どんなバックグラウンドを持つ人にも対応する公務員になるにあたって、この力は大いに役立てられると信じています。
加えて、国際系の学部ということで、自分の視野も以前より広くなったのではないかと思います。高校時代は、国内で起きる「日本人」の問題にしか目が行きませんでした。しかし、グローバル科目と地域研究の両軸で、国家という枠組みを越える問題を学ぶうちに海外経験をしてみたいという思いが強くなり、大学 2 年時に実践型プログラムを利用して南インドへ初めての留学を経験しました。プログラムでは、現地の学生とともに講義を受けるだけでなく、プランテーション農園の見学などフィールドワークも行いました。この 2 週間はとても濃く、私の関心範囲をより広くしてくれました。
FGS で、私は自分が主として学ぶメジャー分野として、市民社会・国際協力論を選びました。これらは公務員の実際の職務とは一見かけ離れているように思えるかもしれません。しかし、そんなことはありません。たとえば、日本以外にルーツを持つ人々は、私たちの身近なところに暮らしています。彼らの人権や生活を守るための業務は、「日本国内でできる国際協力」のひとつです。
また、市民社会論を学んだことも同様です。ゼミ合宿では、NGO や NPO など市民社会組織で働く方々に直接お話をうかがい、現場の力強さを感じました。「行政」は、時に市民社会の壁になってしまう一方で、ともに社会問題を解決するパートナーとして協働していくことも出来ます。ですので、公務員になる者が市民社会領域の理解を深める意義は大きいと感じます。
FGS から公務員を目指す人は非常に少ないですが、ここで学んだ者が公務員になる意義とインパクトは必ずあると確信しています。真の「公平・公正」とは何か、これからも考え続けながら働いていきたいです。