もし「世界/社会を変えたい」なら、その一員である「自分が変わる」ことから始めてみてはどうでしょうか。本科目は、他人事だと思っていたことが自分と関わっていること、個人的なことが地球規模課題とつながっていること、日々の暮らしは政治や社会運動によって変わり得ることを体感するゼミです。性別、性自認、性的志向、年齢、障害の有無、民族、国籍や母語の違い、婚姻や家族構成、就労状況による立場の違いに起因する差別や格差に気づき、その克服を「ソーシャル・アクション」の実践を通じて学びます。そして情報を読み解くためのメディア・リテラシー、自己と他者の権利について敏感になるリーガル・リテラシー、また政策を読み解くためのポリティカル・リテラシーを養い、学生ひとりひとりがエンパワーされるだけでなく、仲間をエンパワーする存在になることを目指します。
このゼミでは、まず基礎文献を読むことをつうじて、人権に関する国際規範などの中から関心のある条約や制度と、その制定に影響を与えたNGOや当事者団体など市民社会組織を選び、どのような運動がその原動力となったのか、規範形成の成功事例を学びます。それだけでなく、チームのプロジェクトや各自の研究に関する新聞・統計資料、NGOのイベントへの参加、議会や裁判の傍聴を通じた情報収集や考察から「情報を生産」することを学びます。
そうした実践のひとつとして、2024年度は「『多文化共生』からインターセクショナリティを意識した人権保障へ:自治体、企業、市民社会組織、移民の当事者団体による『ビジネスと人権』の取り組みと『社会的包摂』」をテーマに、静岡県浜松市でフィールドワークを行いました。このように実務者から学ぶことは、みなさんの人生の選択肢を増やすことにも繋がります。
1. 授業概要
各個人が、ゼミ論や卒論のテーマをもって取り組むもののほかに、輪読やワークショップ等、グループで学びを深めていくものがあります。そうした互いに学び合う関係の中で、各自のテーマを深めていくことができます。
2. この授業を履修しようと思った理由
国際協力の授業で「外部が主導する『開発』ではなく、地域の人々が草の根から自立する『発展』」の重要性を学んだことが、最初のきっかけです。その後、開発経済の授業でアマルティア・センの「ケイパビリティ」の概念に触れ、人々が自らの力を発揮できる環境づくりの必要性を痛感しました。
そこから、貧困層や地域住民が自立するための基盤となる仕組みやエンパワメントに関心を抱き、市民社会領域の当ゼミを受講しました。当初の抽象的な問題意識から、ゼミでの学びや面談を通じて、元々関心のあった「金融」の視点を掛け合わせた「金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)」をテーマとして、現在は研究しています。
3. この授業の魅力
一番の魅力は、異なるバックグラウンドや関心を持つ仲間との能動的な対話を通じて、自分の視野を多角的にアップデートできる点です。特に象徴的だったのは、ゼミで『共生の思考法』を輪読した時のことです。それまでの私は「共生=共に生きること」と漠然と捉えていましたが、そもそも共生には共通の正解がなく、だからこそ「何をもって共生とするか」という一人ひとりの理念が不可欠であると痛感しました。
この気づきを経て、自身の研究テーマである「金融包摂」が、日本政府の資料で都合よく「外国人との共生」という文脈に位置づけられていることに強い疑問を抱くようになりました。それ以来、政府の公開情報だけでなく専門的な学術誌を多角的に参照し、大きな組織の主張を絶対的な「正」としない、多角的な視野を養うことができました。
講義をただ聴くだけでは得られないこうした深い葛藤のプロセス、そして仲間や外部との協働を通じて「対立する意見をどう扱い、自分の言葉で伝えていくか」という実践的なスキルを身につけられることがこのゼミの最大の魅力だと考えています。
(総合グローバル学部4年 平松佑菜)
1. 授業概要
本ゼミの最大の特徴は、机上の空論にとどまらない点です。自分自身の関心と近いテーマを研究しているゼミ生とグループを組み、文献の批判的検討や議論を行う輪読や、他大学との共同ワークショップ(COIL)など様々な実践活動を通じて、能動的に研究を行うための論理的思考力やコミュニケーション能力を身に着けることができます。
2. この授業を履修しようと思った理由
まず自分自身の研究テーマである移民や難民の問題に関心をもったきっかけは、『ルポ入管』という一冊の本を読み、日本の入国管理施設における収容者への構造的な人権侵害の現実に強い衝撃を受けたことが始まりでした。そこから、日本の難民認定率が極端に低い背景にある法的な課題や社会構造について深く知りたいと考えるようになりました。日本社会に潜む移民・難民に対する法的・社会的な排除の仕組み、そしてその根底にある「市民の偏見や無関心」という問題に、理論と実践の両面からアプローチしたいと思い、このゼミへの履修を決めました。
3. この授業の魅力
一番の魅力は、知識を蓄えるだけでなく「対話と実践」を通じて学びを深められる点です。特に初回のゼミでの、田中先生の「社会を変えるとは、見て見ぬふりをしないこと」という言葉が今も強く印象に残っています。当時は「社会を変える」という言葉が漠然としていて、自分に何ができるのか分かりませんでした。しかしSNSでのヘイトの拡散や、政府やメディアの偏重した報道など日本の外国人受け入れを巡る排外主義の現状が悪化するなかで、「日常に潜む偏見の空気を放置しないこと」の大切さを痛感し、強い問題意識を抱くようになりました。
そこで、日常の偏見に対して市民が「見て見ぬふりをせず」に対話を生み出す草の根の運動である「反うわさ戦略」に惹かれ、自身の研究テーマに決定しました。さらに、この学びを学内で具現化するため、卒業制作として「反うわさ戦略ワークショップ」を実際に企画・実践しました。日本社会では前例や文献の少ないテーマでしたが、ゼミ生やソーシャルアクションを実践する卒業生、輪読での多様な対話からヒントをもらったからこそ、形にすることができたと感じています。
4. この授業で学んだことを次にどう繋げたいですか
この授業での最大の学びは、社会課題を考える際、それまで無意識に「自己と他者」の間に線引きをしていた自分に気づいたことです。
私は、社会課題の当事者を「被支援者」「困窮している他者」というフィルターでしか見ておらず、本質的に相手を受け身の存在として固定化してしまっていました。しかし、「反うわさ戦略」のワークショップ活動や、ゼミ時代にインターンをしていたNPOでの経験を通じて、まずは社会を変えたいと思う自分自身のマインドや、マジョリティとしての優位性(特権)を自覚し、その姿勢を見つめ直すことの重要性に気づきました。
社会を「変える」主体として、私自身が本当の当事者意識を持てているのかという問いは、今後も持ち続けなければならない大切な視点です。
この気づきを経て、社会人になった後も、自分の人権だけでなく、すべての人の人権が等しく守られる社会を目指し、共に声を挙げるアライとして活動を続けたいと考えています。学生時代のソーシャルアクションを通じて出会った仲間や、紡いできたネットワークの縁をこれからも大切に活かし、社会に声を届けていきたいです。
(総合グローバル学部4年 井出ちひろ)
1 授業概要
本ゼミは、ソーシャルアクション(社会変革に向けた活動)を通じて、主に移民問題やジェンダー領域について追究する実践的なゼミです。卒業生や外部の方が講義に来てくださる機会も多く、現場のリアルな課題を学び、新たな視点を得ることができます。さらに、国内外をオンラインで結ぶCOIL(国際協働オンライン学習)などを通じて、多様なバックグラインドを持つ学生たちと協働しながら、現代社会の課題に対して理論と実践の両輪から体系的にアプローチしています。
2 この授業を履修しようと思った理由
私がこのゼミの履修を決意したきっかけは、高校生の時に田中先生の社会活動を知ったことでした。当時、先生が入管被収容者の方々へ生理用品を届けるプロジェクトを行っていることを知り、さらに大学1年生の時には、性暴力被害に遭われた方の衣服を展示する「What Were You Wearing?」展を上智大学で開催されている姿を拝見して、社会の不条理に対して直接行動を起こす熱意に強い感銘を受けました。教科書を読むだけの座学にとどまらず、実際に社会を動かすアクションを交えながら移民やジェンダーといった複雑な課題を体系的に学びたいと考え、当事者に寄り添う田中先生のもとで実践的に学ぶべく、このゼミへの履修を決めました。
3 この授業の魅力
本ゼミの最大の魅力は、理論にとどまらず主体的な実践を通して学べる点にあります。去年の夏には先生と共に山梨県甲府市へフィールドワークに赴きました。その中で市の国際交流センターで「反うわさ戦略」についてのワークショップが開かれていることを知り、そこから得た繋がりや学びが発展して、今学期ではゼミ生のひとりが大学内でのワークショップを開催するに至りました。
私はもともとジェンダー領域に関心がありましたが、こうしたソーシャルアクションを重ねる中で、技能実習生をはじめとする移民問題などにも広く問題意識を持つようになりました。特定の領域に視野を狭めることなく、多様な社会課題に関心を広げた上で、それを自らの研究領域へと還元できる土台がこのゼミには備わっています。今年度取り組んでいる『ケイパビリティ・アプローチとは何か』の輪読も、ジェンダーや移民など、異なるアプローチを持つゼミ生全員がそれぞれの問題意識に引きつけて学びを深められる共通の土台となっており、互いの視点を交差させながら高め合える環境が大きな魅力です。 (総合グローバル学部4年 マクレーン沙羅)