menu close
MENU

ゼミ紹介

中東・アフリカ研究Ⅾ

担当教員:澤江史子 教授

私のゼミで学んでいる学生の多くは、大きく括れば、近代以降の中東の国家社会や、西洋に暮らすムスリム・マイノリティが直面する、政治社会的な問題(ナショナリズムや宗教復興、国内・国際紛争、ジェンダーなど)をテーマとしています。また中東やイスラムに特殊と考えがちなそうしたテーマについて、翻って日本についても考えてみることで、私たち自身の認識の問題についても意識的になる機会をもつようにしています。

3年春学期

多様な関心をもつ履修者の個別研究の発表を通して、中東やムスリムが世界の中でおかれた状況について皆で重層的に知識を深めていく、という方法で進んでいきます。英語もちょっとは読んでみようということで、3年春学期は短め易しめの英語文献を学生のテーマに応じて私が選び、発表してもらっています。写真は湾岸産油国国に興味がある学生のためにMoodleに選択肢をアップした様子で、学生はこの中から一つ文献を選んで発表しています。4年生も卒論に向けた発表をしてもらいます。また、司会や議論も学生中心でできるだけ進めてもらうことで、リーダーシップやフォロワーシップについて各自が与えられた役割に取り組みながら考える機会にもなっていると思います。

湾岸産油国国に興味がある学生のためにMoodleに選択肢をアップした様子

3年秋学期

秋学期はゼミ論と卒論の完成に向けて段階を追った個人発表をゼミ生が繰り返していきます。春学期同様に司会も議論も学生中心で進んでいきます。中東域内の多様な国家の事例や中東域外のムスリム・マイノリティの多様な状況に関する互いの発表を通じて、異なる地域やテーマに潜む共通の問題構造が見えてきたり、違いが生まれる条件についてより深く考えるなどの効果が生まれます。また、自分が講義科目も含めてこれまでに学んできた知識を総動員して互いの研究がより良いものになるように考え、アドバイスし合います。春学期もそうですが、ゼミを通じて個別テーマの勉強を深めるだけでなく、レジュメの作り方や論文の論の作り方について互いの発表を通じて考えていくことで、各自が個々にスキルを高めていくことに繋がっています。

イスラエルの分離壁。パソコンの操作のように簡単には問題は解決しない。

中東を政治社会的に地域研究することの面白さと難しさについて

一口に中東といっても、言語や宗教的にそれぞれ特徴が異なる国家に分かれていますし、近代以降の経験も植民地を経験したか、資源があるかなどの諸条件によって、全く異なります。また、中東地域外でマイノリティとして生きるムスリムの状況も、中東域内の非ムスリム・マイノリティの状況も、居住国ごとに多様ですし、イスラーム的な政治社会運動にしても、中東でも西洋世界でもきわめて多様です。しかも、特定国家の状況は、隣国の政治変動や西洋大国との外交関係にも左右されつつ、国家の枠を超えて共振するのです。しかもそこにイスラムなどの宗教が重要な表現形態として介在し、宗教に関わる偏見(イスラモフォビアやレイシズムなど)も刺激要因となって関わってきます。中東イスラーム地域は、これだけの多様性と複雑性に依拠して現在進行形で大変動が各国で個別かつ関連しながら進んでいます。そのため、どのような問題の立て方をしてどのように焦点を絞るのかを決めるのも各人それぞれの個性と問題意識が織りなす創造的な行為です。ゼミ論・卒論段階では読める文献がどれだけあるかによって、現実主義的に問題設定を修正していくことが必要となりますが、様々な研究者がそれぞれの関心にそってどのような問題関心からどのような対象をどのように研究し、論じているのか、是非いろいろ読んで自分を啓発してくれる研究者や文献を見つけて、学びを深めていってほしいです。また、中東の多様性と重層性がグローバルな全体性とダイナミックに関連して展開していることを、多様な国家やアクター、トピックに関心を持つ学生の発表を通じて一緒に学んでいけたらと思います。

イスタンブルの新市街側から旧市街側方向への見晴らし

ゼミテーマを知るためのおすすめ書籍

このような多様性とダイナミズムに富む中東イスラーム地域の政治社会的な問題について2点に絞るのは至難の業であり、是非、文献検索スキルを身に着けて、図書館から自分にとっての1冊を自ら見つけてほしいです。近年、多くのイスラム関連の事典・辞典類や中東関連教科書、個別研究書が刊行されています。ですから自分が対象とする国とテーマにドンピシャの本はなくても、別の国について同様のテーマで書かれた文献を見つけることができるかもしれず、最初は特定の国家社会とトピックの両方で検索を行ってみると良いと思います。それでも敢えて2冊あげるとすれば、2022年12月刊行予定の『イスラーム文化事典』(イスラーム文化事典編集委員会編、丸善)はイスラームの考え方や文化の他、主要国政治やマイノリティ、ジェンダー状況など、政治社会的な側面についても項目・コラムがあるので、短い読み物を通して知識の幅と視野を広げるのに適しています。また、2014年刊行のため近年の変動に触れられていないという面はあるのですが、小杉泰『9.11以降のイスラーム政治』(岩波書店)はより政治面に特化しつつも、生殖医療や生命倫理の問題にも触れるなど、イスラームと地域政治の深い理解に依拠して、今世紀のイスラーム地域(中東アラブ地域が主体ですが)の政治社会的な動向について様々な論点に言及しています。中東を国際政治と絡めて理解したい人は必ず読むべき本だと言えます。